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高橋ペットクリニック ブログ

高橋ペットクリニックからのお知らせです。臨時休診や飼い主様への情報を提供します。


動物病院の麻酔のお話(5)鎮痛と麻酔維持

こんにちは。
獣医師の藁戸です。

今日は麻酔のお話です。

今回は

「鎮痛」と「麻酔維持」
に関して書いていきます。

過去のブログに麻酔の導入や挿管について書きましたが、これらは患者さんを麻酔薬で眠らせる処置になります。

「麻酔維持」とは、意識を無くして眠った状態を、手術が終わるまでお薬を使って継続させる事を意味します。

実際には、麻酔導入をプロポフォールで、麻酔維持はイソフルランやセボフルランといった吸入麻酔薬という別のお薬を用いているのです。吸入麻酔薬とは揮発性麻酔薬というもので、揮発させたお薬を酸素や空気に混ぜて、肺から血液に入れて行くお薬の事です。
(※手術によってはプロポフォールで麻酔維持する場合もあります)

吸入麻酔薬の利点は体から早く消えてくれるため、お薬の投与をやめれば、速やかに麻酔から覚醒してくれるところにあります。

しかしその反面、麻酔薬が多くなればなるほど、強力に心臓の動きを抑制したり、血圧を下げたりする欠点もあります。

そのため、吸入麻酔薬は過度に投与しないよう努めなくてはいけません。

ここで問題になってくるのが、

「鎮痛」です。
鎮痛とは、手術によって生じる痛みを取り除く事です。実は吸入麻酔薬に鎮痛効果はほとんどありません。導入に用いるプロポフォールにも鎮痛効果は全くありません。

従ってこのまま手術をしてしまうと動物は痛みに苦しみますし、痛みによって目を覚ましてしまいます。そこで吸入麻酔薬をたくさん入れると、薬の欠点が強く出てしまい、血圧が下がり危険な状況になります。

そのために、別に鎮痛薬というものが必要なのです。

モルヒネというとご存知の方も多いのではないでしょうか?麻薬になりますがとても強い鎮痛効果を持ちます。さらにはフェンタニルやレミフェンタニルというものがあり、モルヒネより強力に鎮痛効果を発揮します。

それ以外にも、ケタミンやリドカイン、ブプレノルフィン、ドラマドール 、NSAIDsなど多様な鎮痛薬が存在します。

近年は末梢神経ブロックといった、手術する領域の神経をお薬でブロックする事で、強力な鎮痛効果を得られる技術も発展しており、当院でも適応症例に実施しています。

鎮痛は動物の状態や手術内容、想定される痛み、術後の状況も含めて考え実行しなくてはいけません。

痛みを取り除くということは、動物の苦しみを取り除く意味と、手術が終わるまでの間(術後もそうですが)安全に麻酔を維持し、動物の命を守るという大切な意味もあるのです。

手術をすれば痛みが生じるのは当然です。
しかし、動物は話をする事ができません。
私達が注意深く観察して、少しでも痛みを取り除けるよう努めていきます。

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動物病院の麻酔のお話(4)短頭種の麻酔

こんにちは!

獣医師の藁戸です。

今回は前回の挿管の時にお話しした、「短頭種の麻酔」に関してです。

そもそも短頭種とは?

頭の幅に対して縦の長さが短い犬種の事を言います。パグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリア、ペキニーズ、シーズー、チワワなどのワンちゃんたちです。

短頭種の麻酔は気をつけるべき点が複数あります。
1. 鎮静剤の投与は慎重にすべきである
2. 気管チューブのサイズは小さいものも複数準備しておくべきである
3. 動物がストレスを感じなければ麻酔前の酸素化をすべきである
4. 静脈麻酔薬を使用して速やかな麻酔導入をすべきである。マスク導入は推奨されない。
5. 意識が速やかに戻る薬物を使用すべきである。拮抗薬のある薬物は有用である。
6. 挿管後は気道の閉塞を発見するために、患者の呼吸音と呼吸様式を観察すべきである。
7. 伏臥位で頸部を伸ばし、舌を引き出して気道を確保するよう試みるべきである。

WILEY Blackwell, Veterinary Anesthesia and Analgesia The Fifth Edition of Lumb and Jones より引用改変

麻酔の教科書にはこのように細かな注意点がたくさん記載されているんです。

ではなぜ短頭種の麻酔はリスクが上がるのか?その理由はほかのワンちゃんとは異なる「呼吸器の解剖」にあります。

ではなにが違うのか?

まずわかりやすいのが、
鼻の入り口が狭い

パグやブルドッグで顕著ですが、お鼻の入り口が狭くなっています。
狭くなっているため空気が通りにくくなってしまいます。
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つぎは、
鼻の中の構造が窮屈
鼻の中には鼻甲介(写真黄枠のグレーの部分)と呼ばれる板のような構造物があります。短頭種は鼻が短いため、鼻甲介がギュッと詰まったようになってしまいます。
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軟口蓋が長い
軟口蓋

写真はワンちゃんの口を大きく開けて、軟口蓋をひっぱっている所です。
軟口蓋はヒトにもありますが、舌で上顎を触っていくと硬い部分から柔らかい部分に移っていきます。この柔らかい部分が軟口蓋です。短頭種はこの部位が長い子が多く、長い軟口蓋が喉の奥、気管の入り口を塞いでしまいます。

この3つの特徴からなんとなく短頭種の子たちの呼吸がイメージできたでしょうか?

呼吸するのが大変そうですよね!

短頭種の子たちは、このような呼吸器で毎日生活しています。
するとどうなるか?
頑張って呼吸をしていますので、負担が生じます。
喉が腫れたりよじれたり、気管が潰れたりしてどんどん呼吸がしにくくなっていきます。もっと頑張って呼吸します。
もっと腫れたり潰れたりします。

そうすると、気管の入り口が閉塞しやすくなり、麻酔の導入や挿管時に呼吸ができなくなったり、気道の入り口自体が狭く挿管できなくなる危険性が高まります。

ゆえに麻酔導入時には十分な酸素化と、呼吸抑制を最小限にする投薬、気道を確保する管理が重要です。

短頭種の麻酔リスクが高いと言われるのは、この導入・挿管の難しさに大きな理由があると言えます。(※麻酔維持中や麻酔後にも注意すべき点は多々あります)

・夜にイビキをかいていませんか?
・興奮するとすぐ、ガーガー、フガフガといいませんか?
・運動するとすぐ疲れませんか?

このような症状が当てはまる時はトラブルを生じている可能性が高くなりますので、獣医師に相談して下さい。


「短頭種だから麻酔は出来ないですよね?」

このようにお問い合わせいただくケースも少なくありません。

短頭種だから麻酔ができないという訳ではありません。
それぞれの個体のリスクを評価し、適切な手法で麻酔を施すことが大切です。

お困りの際はぜひご相談ください。

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動物病院の麻酔のお話(3)

こんにちは!

高橋ペットクリニック
獣医師の藁戸です。

今回は前回の「導入」に続き、「挿管」に関して書きたいと思います。

挿管って⁇

これは動物の気管の中に専用のチューブを入れることで、動物の体外と気管をつなぐことができ、空気の通り道を確保する事です。

気管チューブとは下の写真のものです。

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このチューブを挿管すると、下の写真のようになります。
口の中を通り、首まで続いている白い管が気管チューブです。

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これには様々なメリットがあります。
①麻酔中、いつ呼吸が止まっても、気管チューブを介して、酸素を送ることができる

②肺の機能や、血液の巡りなどを推測する事が出来るため、より精密な管理が実施できる

③動物が万が一麻酔中に嘔吐しても、甚大な誤嚥を防止できる

④心臓や肺など、開胸が必要な手術を可能にし、筋弛緩薬を使用する事も可能になる


一方デメリットもあります。
①短頭種などでは気管挿管の難易度が上がる場合があるため、習熟が必要

②血圧や脳圧、眼圧の変動

③気管刺激による発咳

④気管チューブによる気管の裂傷


挿管のメリットとデメリットを天秤にかけると、日常的な手術においては得られるメリットの方がはるかに多いため、ほぼ全ての症例において挿管を実施しています。

そのなかで、挿管の難易度が高いケースがあります。それが短頭種(フレンチブルドック、パグなど)と呼ばれるワンちゃん達です。

「短頭種の麻酔は危険だ」

このような話を耳にされる方は多いのではないでしょうか?

この子たちの麻酔リスクが高いと言われる理由の1つは、実はこの「挿管」にあるのです。
次回はこの短頭種の麻酔に関して書きたいと思います!

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動物病院の麻酔のお話(2)

こんにちは!

獣医師の藁戸です!

今日からは私たちが日頃よく実施している麻酔法について説明します。

使っているお薬のことや、麻酔中どんな事をやっているのか、手術の痛みはどうやって抑えているのかなどなど、いろいろお伝え出来ればと思います^ ^

まずは、麻酔の基本的な流れについて!

わかりやすく分けると大まかに以下のようになります。



①導入

②挿管

③維持・鎮痛

④覚醒

⑤抜管

⑥麻酔後管理



ひとことに麻酔といっても、実はいろんなステップがあるんです!



そして、手術が終わったら麻酔は切れます。でもその後の管理もとても大事なのです。



それぞれ順を追って説明していきますが

今日は①導入についてです!

①導入

これは手術ができるレベルまでお薬を用いて麻酔をかけていく事です。これにより動物は意識を消失するわけですね。

怖いことも忘れてしまいます。

私たちがよく用いるお薬はプロポフォールというものです。

当院では年間約900件、麻酔を実施していますが、そのほとんどはプロポフォールを使用しています。

プロポフォールは人医でも一般的に用いられているお薬です。

このお薬のいいところは、すぐに効果が得られるし、かといって麻酔は長引かない!という事です。

怖がりのワンちゃんやネコちゃんは、麻酔の導入の際に、時折大暴れしてしまう事があります。

知らない人ばっかりに囲まれているわけですから怖いに決まってますよね・・・

暴れてしまうと本人がけがをしてしまいます。ましてや病気の体。余計に体力を使ってしまいます。

心臓が悪い子はなおさら注意が必要です。

怖くて暴れるだけで失神してしまう子もいるわけです。

いまから手術に挑む子たちのストレスは極力少なくしてあげたい。

そんなときに、素早く効果がでるお薬はとても役に立ちます。動物がドキドキする時間も短くて済みます。

多少暴れても私たちが押さえつける必要もありません。

麻酔が終われば、簡単な手術なら1時間後にはまっすぐ歩いて帰れます。

ただし、もちろん副作用もあります。

このお薬は呼吸を止めたり、血圧を落としたりする作用もあります。また数は少ないですがアレルギー反応も起こる場合があります。

怖いですよね。

なので、このお薬を使うときは動物の呼吸や循環をしっかりと管理しながら慎重に麻酔の導入を実施しています。

不必要に呼吸を止めないように、極力血圧を下げないように。

どのお薬にも副作用というものはありますが、特徴を知って対策を立てる、緊急時に備えるという事が最も大切です。

獣医師である私たちがお薬をどう使うかにかかっていると思います。


                  小動物における周術期死亡率

             The Veterinary Journal 182 (2009) 152–161

           Review Perioperative mortality in small animal anaesthesia



すこし前ですが、この報告には周術期に死亡した動物の6~8%が麻酔導入時であったと記載されています。

このデータからも麻酔の導入というのは、とても重要な場面なのです。

こんなことを言われると怖くなりますね。

でも恐れていては麻酔を実施することはできません。そのためにリスクは知っておかなくてはいけません。

私たちはこのリスクを0%に少しでも近づけるため、努力していきます。

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